こんにちは。
現在では心理学の実験においても倫理観が重視され、実験内容も被験者に対して十分に配慮されたものがほとんどとなっております。
私が大学の授業で被験者を用いた実験を行う際も、先生方に倫理観について十分にご教示いただいたのを覚えています。
しかし、昔の実験は今ほど倫理観が重視されておらず、非人道的な実験も横行していました。
その1つとしてスタンフォード監獄実験というものがあります。
スタンフォード監獄実験は、心理学者のフィリップ・ジンバルドーによって行われた、状況が人に与える影響についての実験です。
被験者は性格診断で比較的平均的な数値を出した大学生21人を、看守役と受刑者役に分け、2週間の間それぞれの役職に準じた生活をはじめました。
しかし、看守役の被験者は、受刑者役の被験者たちに対して、日に日に残酷で非人道的な行動を繰り返すようになり、受刑者役の数名がストレス障害を発症したこともあり、2週間を想定していた実験も6日で中止となりました。
後に日々の被験者たちの記録を確認したところ、看守役の被験者は最初こそ受刑者役の被験者へ命令することに戸惑いを感じていましたが、すぐに順応し積極的に命令を出したり、罰則を与えるようになりました。
このことから人間の行動は、その人の元々の性格ではなく、置かれた状況によって決まることが分かりました。
非人道的な行動とは具体的にどのようなことだったのか。
初日は受刑者役に屈辱感や無力感を与えるための処置の名目のもと、全裸にした上でシラミ駆除剤を散布、その後囚人服として、薄い布のワンピース服、足首には金属製の鎖を取り付けるという、この時点で如何なものかと思う行為が行われています。
その後も問題を起こした場合は連帯責任と称し、他の受刑者役の就寝用のベッドを没収したり、本来行わない深夜帯の点呼、夜間のトイレの使用の禁止や従順でない受刑者役に対しては狭い独房に監禁することもありました。
これらの行動は看守役の独断で行われ、また前提として暴力は禁止とされていたため、自尊心を傷つける精神的虐待が行われるようになりました。
本来は実験責任者が注意を促すか中止が妥当であると思われますが、ジンバルドー自身も実験の中で冷静さを失い、続行をしてしまったのだと言われています。
スタンフォード監獄実験は、あまりにも非人道的な実験ではありましたが、それ故に浮き彫りになったこともありました。
それは非情なまでに状況が人間を変えるということです。
もともと性格診断で一般的と言われる人たちを集めたにも関わらず、アドリブで行き過ぎた行動を繰り返す結果となりました。
また、ジンバルドー自身もスラム街出身であり、悪事に手を染める友人たちを見て、状況が人を変えるということを目の当たりにしてきたことから、本実験を決行したのだと考えられています。
現在のいじめについても、いじめをするグループに加担しないと自分がいじめられるという話も多いことから、そのような状況がいじめを生んでいるのではないかと思われます。