こんにちは。
「終わりよければすべてよし」という言葉を聞いたことはありますか?
様々な物語に使われる傾向があり、物語中はさんざんな目にあっても、最後がハッピーエンドだったらよいという考えですね。
もちろん全てが順風満帆なのが一番理想的ですが、実は心理学的にも最後がよければ基本的にいい印象を持つという研究結果もあります。
ピーク・エンドの法則は、心理学者・行動経済学者のダニエル・カーネマンによって提唱された心理的傾向であり、人は過去の物事に関する印象は感情が最も動いた「ピーク」の経験と、終わりの局面である「エンド」に大きく左右される傾向にあります。
例えば、多くの人が経験しているであろう中学・高校生活において、何が印象的かを聞くと、多くの方が文化祭や体育祭、修学旅行などの楽しい出来事(ピーク)や、受験や就活、卒業式などの終盤の出来事(エンド)を思い浮かべるのではないでしょうか。
これはピーク時とエンド時の記憶が、高校生活の印象として大きく残るからだと考えられています。
つまり、その他の中間テストや多くの日々が多少楽しくなくても、この2つの印象がいいものであれば、ピークとエンド以外の細かな記憶は影響されにくく、楽しい学生生活であったと印象付けられる傾向にあります。
逆に、いじめにあっていて楽しくない状態がピークで、受験や就活も失敗してしまったような場合では、他にいくら楽しい経験をしていても全体的な評価に影響を与えづらく、楽しくない高校生活という印象となるでしょう。
ダニエル・カーネマンは冷水と印象に関する実験を1993年に行っています。
手が痛くなるほどの冷水に60秒手をつけた場合と、90秒冷水に手をつけますが、最後の30秒は若干温度が上がる2パターンを被験者に経験してもらい、もう一度やるならどちらがいいか調査を行いました。
結果、後者の90秒の方がよいと答えた被験者が8割を超えました。
後者は最後に水の温度が上がったとしても、最初に冷たい水に浸す時間は前者と同じです。
しかし、後半に水温が上がったことにより不快感が和らぎ、エンドの印象がよくなったことにより、後者の90秒が選ばれたのだと考えられています。
ピーク・エンドの法則はマーケティングや、普段の対人関係など様々な場面で活用されることがあります。
よく例に出されるレストランの食事では、コース料理を頼んだ時のピークは多くの場合にメインディッシュを食べている時だと思われます。
この時に料理の質、店内の雰囲気、接客態度などを最大限に引き上げることにより、お客さんはとてもいい印象を抱くと考えられます。
エンドにおいてはレストランからの帰り際だと思われますが、お口直しのコーヒーの提供、ささやかではあるがお土産のお渡し、出口まで見送りお客さんの姿が見えなくなるまで深々と頭を下げ続けるなどのおもてなしをすることにより、お客さんへ手厚い接客であったと印象付けることが出来るでしょう。
他にも、ピーク・エンドの法則は、人に好印象を与えたいときにも利用できます。
特にエンドの部分である別れ際の振る舞いに気を配ることが大切です。
これは対人関係において、どこを会話のピークと捉えるかは相手しだいですが、エンドの印象ならばある程度コントロールが出来るからです。
別れを惜しむような態度をとってみたり、ポジティブな感想やお礼の言葉を伝えるなどして、エンドにいい印象を感じてもらえるようにするのがよいでしょう。
仕事や人間関係が全て完璧に出来る方は少ないと思われ、多くの人は何かしらの失敗をしてしまうでしょう。
この失敗のリカバリーとして、ピーク・エンドの法則を利用してみるのはいかがでしょうか。